知識とは?

 卒論完成しました。

 ホントにバタバタしましたが、これでようやく正月を迎えることができます。。

 これで、toraponの部屋で知識交換に向けた、情報の発信と蓄積を始めることができます。

 ところで、知識交換においても、知識と情報などは実際にあまり区別されずに議論されることが多い。そこで、まず初めに現在議論されている知識の議論についてレビューしてきたい。

 原則として、既存の論文などを紹介しつつ進めていくので、初めにその日の議論の基礎となる論文を掲載したいと思う。
湯川抗「ITを活用した知識創造社会の実現にむけて-プラットフォームとしてのコミュニティ-」富士通総研(FRI)経済研究所研究レポート No.142 October 2002
http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2002/report142.pdf

 上記の論文では以下のような論点で議論がなされています。
①過去の研究成果を基に、今後我が国がインターネットを有効活用して実現すべき知識創造社会の具体的なイメージを形成する。
②そのような社会を実現するために有効な知識創造のプラットフォームとしてのインターネット上のコミュニティに関し、オープンソースコミュニティを中心に分析する。同時に、知識創造のプラットフォームが企業組織からコミュニティへと変化する可能性に関して述べる。
③既に新たなプラットフォームを活用している企業や個人の実際の事例を分析する。最後に、今後インターネット上のコミュニティを活用して、企業が創造された知識を実際の財に変換する方法と、政府が知識創造社会を実現する方法に関して述べる。
というものである。
 今回は、その中で、①を基礎に知識社会における知識とな何かについて取り上げる。

 知識社会を語る際に「データ」、「情報と知識」、あるいは「知識と知的資産」といった言葉を区別せずに、「情報」としたり、「知識」として語られたりすることは少なくない。

(1) データ
 データとは事実や数字である。個々のデータには関連付けがなされておらず、それ自体は意味を持たない。人間や機械がやりとりする信号や合図などは全てデータであり、データは人間でも機械でも生み出すことができる。作成、伝達されたデータは情報、知識、知的資本を生み出す基となるものであり、個人も企業も生存するためにデータを必要としている。
(2) 情報
 情報とは何らかの目的のもとでデータに意味を付けたものである。データに目的をもって意味を付けるという行為は、情報が伝達されるという概念を持っていることを意味しており、情報には出し手と受け手が存在することになる。情報の出し手や受け手には、人間でも機械でもなることができる。つまり、情報は人間にも機械にも作成することができる。
(3) 知識
 知識とは特定の目的のもとに体系化され、統合された一連の情報である。したがって、知識を外部世界から直接獲得することは不可能であり、知識を獲得するためには情報の存在が不可欠である。
 また、ある目的で情報を体系化し統合する主体は常に人間であり、コンピュータのような人間以外のものが知識を獲得することはできない。これは、個々人の価値観や体験、その場の状況判断などといった人間にしかなしえないものが媒介になって初めて情報が知識に変化するためである。つまり、人間の脳が様々な情報を処理するプロセスから生まれたものが知識といえる。
(4) 知的資本
 知的資本とは企業が価値を創造するための経営資源のうち、財務諸表に現れない資産としての人的・機構的な資産である。先に述べたように、知識は個人にしか蓄積されないが、知識をもった個人を組織的に活用することや、その活用方法を体系化することで企業に蓄積された方法論等は企業の知的資本となる。
 知的資本は組織内の個人のもつ知識と密接に結びついているため、ある特定の知識を持った社員が企業を離れれば、その知識を基に作られた情報は組織の中に残るが、知識は失われ、その企業の知的資本は減少する。しかし一方で、新しい知識を持った社員が入社し、その知識を組織的に活用することができれば、企業は知的資産を増強することができる。これを個人の知識の側からみると、ある個人の知識はある企業の知的資産に組み込むことができなくても、他の企業の知的資産に組み込むことができる可能性はある。これは、個人の知識を企業にとっての知的資産に変換しているのは、組織内に存在している仕事の手順やヒエラルキーといった秩序や、研究施設や職場の環境といった有形無形の資産であるからである。
 したがって、企業は知的資産の増強を図るため組織内に効果的な情報流通の仕組みを作り上げる等、個人が知識を創造しやすい環境を構築する方法を考える必要がある。このような観点からみると、「ナレッジマネジメント」とは企業内で個人の知識の共有、移転、結合を組織的に行い管理することで、知的資本を効果的に増強するための取り組みと捉えられる。
 しかし、知識社会においける知識交換という観点においては、上記の組織的な、いわゆる野中的知識とは異なる。次回においては、野中的知識との違いを述べていきたい。