ECの定義(1)

EC(Electronic transaction)のビジネスモデルを見ていきたいが、ECはまだ若い概念でその定義も様々あるので、まず、そこからレビューしていきたい。ECの定義については、現在発展途上の概念であるため、似たような意味で用いられている言葉が様々存在し、色々の機関や学者により定義が異なっている。


OECD"Working Party on Indicators for the Information Society 2005"
http://www.oecd.org/dataoecd/41/12/36177203.pdf
 OECD の広義の定義によると、「電子的取引(Electronic transaction)とは、企業、家計、 個人、政府、その他の公的・私的組織間を問わず、コンピューターを媒体としたネットワーク上で行われる財またはサービスの販売または購入である。財・サービスは、ネットワーク経由で注文が行われるが、財・サービスの決済や最終的な配送については、オンライン、オフラインのいずれでも構わない」とある。具体的には、インターネット・アプリケーション、EDI、Minitel(フランス国内で提供されているビデオテックスサービス端末)、インタラクティブ電話システム等、自動化された取引に利用される、あらゆるオンライン・アプリケーション上での受発注が該当する。
 OECD の狭義の定義によると、「インターネット取引(Internet transaction)とは、企業、家計、個人、政府、その他の公的・私的組織間を問わず、インターネット上で行われる財またはサービスの販売または購入である。財・サービスは、インターネット経由で注文が行われるが、財・サービスの決済や最終的な配送については、オンライン、オフラインのいずれでも構わない」とある。具体的には、Web ページ、エクストラネットの他、インターネット経由EDI、インターネット経由Minitel またはその他のWeb 対応アプリケーション等、Web のアクセス形態(例.モバイル、TV セット経由等)に関わらず自動化された取引に利用される、インターネットを介して稼働するアプリケーション上での受発注が該当する。他方、電話、FAX、従来型の電子メールによる受発注は該当しない 。



 ノーリス(Norris, M, West S. and Gaughan, K(2000), e Business Essentials, John Wiley & Sons, LTD,)らは、Eビジネスという言葉をEコマースやEトレードの同義語とみなし、「Eビジネスは、商品とサービスをネットワーク上で購入・販売するあらゆる側面を含む」と述べている 。



 さらに、専修大学の竹村憲郎(「Eコマースの普及とバーチャル・ストアのコスト的側面」『専修経営学論集』2001 No.72 pp.51-77)はこれまでの定義をまとめる形で、「Eコマースとは、情報通信ネットワークを介して電子的に行われる商取引およびその関連活動」と定義している 。



 また、根来(根来龍之・木村誠『ネットピジネスの経営載賂:知識交換とバリューチューン』日科技連出版社 1999)はECを「コミュニケーションの一部あるいは全部を電子媒体を利用して行う商取引」とし、IC(インターネット・コマース)をコミュニケーションの一部あるいは全部をインターネットを利用して行う商取引と定義し、区別している 。



METI 情報経済アウトルック2005「電子商取引に関する実態・市場規模調査」
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/051003ecom.pdf
 経済産業省では、広義の定義として、「コンピュータネットワークを介して商取引が行われ、かつその成約金額が捕捉されるもの」。ここで商取引行為とは、「経済主体間での財の商業的移転に関わる、受発注者間の物品、サービス、情報、金銭の交換」をさす。狭義のECに加え、VAN・専用線等、TCP/IPプロトコルを利用していない従来型EDI(例.全銀手順、EIAJ手順等を用いたもの)が含まれる。
 狭義の定義として、「インターネット技術を用いたコンピュータネットワークを介して商取引が行われ、かつその成約金額が捕捉されるもの」。ここで商取引行為とは、「経済主体間での財の商業的移転に関わる、受発注者間の物品、サービス、情報、金銭の交換」をさす。「インターネット技術」とは、TCP/IPプロトコルを利用した技術を指しており、公衆回線上のインターネットの他、エクストラネット、インターネットVPN、IP-VPN等が含まれる 。
●広義のEC と狭義のEC

 経済産業省の定義で「コンピュータネットワーク」と呼んでいるものは、見積、受発注、決済等の様々な商取引行為を支援するために構築された、専用システムを想定している。従ってWeb-EDI はEC(狭義のEC)に含まれ、従来型EDI は広義のEC に含まれることになる。電子メールのプロトコルSMTP)を利用したインターネットEDI なども、商取引専用のコンピュータネットワークであり、経済産業省のEC の中に含まれる。ただし、受発注者間の電子メールのやり取りのみ、またはインターネット電話による商談のみによって成約した取引というのは、商取引専用のシステムではないので、EC には含めていない。
 EC における商取引行為の定義範囲としては、受発注、すなわち購入意思表示がインターネット技術を利用したネットワーク上で行われることを要件とすることが、一般には比較的多い。しかし、経済産業省ではより広い範囲をも含めている。すなわち受発注の前工程がインターネット技術を利用したネットワーク上で行われたものであっても、成約への貢献が明確に特定・捕捉できるものについては、これをEC に含めている。
 これはインターネットを利用した売り方はジャンル/品目により異なり、それぞれのジャンルの事業者がもっともふさわしい形でEC を活用するための、基礎データを提供することが、経済産業省の目的であるからである。この対象となっているものは、B to C における、自動車と不動産である。


 次回は、経済産業省の定義の基づいて、ECに具体的にどのようなものが含まれるかを見ていきたい。