出口のプラットフォーム

 プラットフォームに関する先行研究として、まず出口を挙げたい。
出口弘『複雑系としての経済学』日科技連 2000

 出口は、プラットフォームを、「何らかの装置やソフトウェアや規格」 、または、「上位構造を規定する下位構造(基盤)」 と定義し、「プラットフォーム上に何らかのサービス提供が可能となる産業」プラットフォーム産業とよんだ。また、「プラットフォームそのものを提供する産業」を、プラットフォーム提供産業と呼び、「何らかのプラットフォームを前提としてその上でサービスを提供する産業」プラットフォームサービス産業と呼んだ。プラットフォーム・ビジネスの持つネットワーク性と階層性、特にプラットフォーム提供産業とプラットフォームサービス産業の垂直統合によるシステム規模の経済性を論じるための概念として、プラットフォーム産業を用いた。
 また、「プラットフォームとサービスとの間の正のフィードバックが起こること」プラットフォーム効果と読んだ。また、囲い込みの効果を弱めるための戦略として位置づけられるものとして、複数のプラットフォームに共通のコンテンツを積極的に流通させることをクロスプラットフォーム戦略と呼んだ。一般的にこのような状況をクロスオーバーコストの低下 と呼んで、独占を防ぎ、市場競争を活性化させる重要な要因であると指摘している。
 プラットフォーム提供者は、このプラットフォーム効果を期待して、ビジネス戦略を考える。すなわち、いかに魅力的なサービス(補完財)を展開できるかが競争上の重要課題である。この点について、A. Gawer と M. A. Cusumanoは “PlatformLeadership” (2000)という著書の中で、プラットフォームを提供する企業の戦略を分析し、以下の4つの視点が重要であると結論づけている。
アナベル・ガワー, マイケル・A.クスマノ著 小林敏男監訳『プラットフォーム・リーダーシップ : イノベーションを導く新しい経営戦略』有斐閣, 2005.3
① 補完財の提供をプラットフォーム提供者が自ら行うか、または市場から調達するか。
② モジュール化の度合いが適切で、プラットフォームと補完財とのインターフェースがオープンであるか、クローズであるか。
③ 補完財提供者とのパートナーシップの関係、競争と協調のバランスをどのようにとるか。
④ 内部組織の最適化。補完財提供者からの信頼をえるための組織運営。