根来のプラットフォーム・ビジネス

根来龍之・木村誠『ネットピジネスの経営載賂:知識交換とバリューチューン』日科技連出版社 1999
根来龍之監修 早稲田大学IT戦略研究所編『mixiと第二世代ネット革命』東洋経済新報社 2006.9
根来龍之・木村誠「インターネットコマース(IC)発展のためのプラットフォーム・ビジネス類型化の試み-知識チェーンと知識インタラクションの相互発展-」
http://www.f.waseda.jp/negoro/ec/EcPlatform.PDF
根来龍之・木村誠 インターネット上の仲介ビジネスにおける知識リレーションシップの構造
http://www.bekkoame.ne.jp/~kmakoto/netbiz/ic_ks/June1999.html
根来龍之「競争と共有の関係」
http://www.jnx.ne.jp/download/seminar/030620_negoro.pdf
根来龍之「インターネットがB2Cビジネス構造に与える影響 2004年時点での総括」
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/4345/1/93105_400.pdf


 根来のプラットフォーム・ビジネスを次のように定義した。
「複数の第三者間のコミュニケーションに介在し、商取引を活性化する私的ビジネス」


プラットフォーム・ビジネスの種類は以下の3つである。
①インフラ型プラットフォーム・ビジネス:不特定の主体間の生産や商取引を可能にする基盤を提供する私的ビジネス
②取引仲介型プラットフォーム・ビジネス:主体間に介在して、第三者間の取引を活性化させるビジネス
③インターネットプラットフォーム・ビジネス:取引仲介型プラットフォーム・ビジネスのインターネットにおける部分集合
●取引主体とビジネスモデルの関係

B to B B to C
主体取引 インターネット・サプライ業 インターネット・小売業
介在取引 IC-Plat Form Business

 プラットフォーム・ビジネスの機能としては以下の5つを挙げている。
①検索性
②網羅性
③中立性
④信用供与
⑤情報整理


 また、根来はプラットフォーム・ビジネスと既存の仲介業との違いもあげている。そこでは、プラットフォーム・ビジネスを4業態に分けて比較した 。
1)マッチングビジネス
買い手と売り手を出会わせる、市場を提供するビジネスで、仲介ビジネスそのもの
2)コミュニティビジネス
情報交換をする場所を提供するビジネスで、仲介ビジネスではない
3)リンケージビジネス
買い手と売り手の間に入って、その関係をつなぎ止めるような役割をするビジネスで、小売ビジネスに近い
4)ヴォータルビジネス
コミュニティ系の要素とリンケージ系の要素を両方持つビジネスで、仲介ビジネスの一種である。




 根来の國領の研究に新たに加えられたのは、インターネット上でのプラットフォーム・ビジネスの果たす役割を論じた点である。そこで、根来はIC-PFBを以下のように論じた。
 根来は、デジタル市場でのバリューチェーンを実現するものとして期待されているインターネットコマース(以下ICと略記)を「コミュニケーションの一部または全部をインターネットを利用して行う商取引」と定義し、ICを通じて発展するバリューチェーンに貢献するプラットフォーム・ビジネス(以下PFBと略記)について論じた。
 バリューチェーンの概念はPorter(1985)が提唱したものであるが、サプライチェーンと対比すると理解しやすい。そこで両者の関係を次のように表現した。
 バリューチェーンサプライチェーンの本質である。サプライチェーンバリューチェーンの実現形である。」
 バリューチェーンは価値付加活動の本質的つらなりに着目した表現であり、設計の対象にはなりえるが目に見えない価値を積上げていくためのプロセス連鎖である。一方、サプライチェーンは価値付加活動を通じて作られる実際の製品/サービスに着目している。そのため、仕掛品や最終製品がいつどの場所を経由して目的地に届けられるかといた物流的視点が入ってくる。企業間取引が成立する根拠はバリューチェーンの存在であり、一方バリューチェーンのオペレーションであるサプライチェーンは実際の企業間取引そのものだと言える。このときのバリューとは、利用者から見た素材、部品、製品の価値(素材、部品、製品の利用目的)を意味する。


 根来は、インターネットコマースにおけるプラットフォーム・ビジネス(IC-PFB:Internet Commerce ― PlatForm Business)を以下の様に定義した。
 IC-PFBの定義
「複数のバリューチェーンに介在し、インターネットを利用した商取引を活性化させる私的ビジネス」


 IC-PFBの6つの基本機能を以下に示す。
1)オンラインカタログ編集:アクセス者の照会に応じて、一元管理されたデータベースから必要なデータを引き出し、リアルタイムに作成されるカタログ編集。
2)ウェブリンク:他ウェブサイトが持つ内容を結びつけて表示を行う。
3)知識交換:ウェブリンク、電子メール、電子掲示板、他メディアを利用したコミュニケーションによって実現されるIC-PFBと各アクセス者間の結びつき(リンク)。この知識リンクによってアクセス者間の知識交換を実現する。
4)相手と製品の検索:アクセス者の照会に応じて、相手と製品について必要な情報をインターネット上で検索し、相手と製品について情報一覧を提供する。
5)信用供与:顔が見えない売手と買手の与信査定。
6)評価:製品またはサービスの批評情報、お薦め情報の提供、消費者からの評判の通知。
 そしてIC-PFBに必要な機能ではないが副次機能として次の2つの機能がある。
7)電子決済:機密保護された電子決済手段の提供。
8)代行:評価、交渉、購入、配送についてアクセス者から依頼を受けて代行する。


 ちなみに、根来はIC-PFBにとって最も重要な機能は知識交換機能であると指摘しており、国領(1995)の提唱した取引仲介型PFBとの大きな違いであると考えている。
 根来の提唱したIC-PFBは、國領のプラットフォーム・ビジネスを更に発展させ、知識交換は顧客間インタラクションを大きく超えて議論し、知識社会においてのプラットフォーム・ビジネスの分類と発展の方向の提案を試みている。