知識交換モデル

 以前、根来の知識交換モデルを紹介したが、今回は、ECに適応させより一般的な知識の定義に置き換えることで、整理し直し、知識交換モデルとして提案したい。

 
 まず、根来の知識交換モデルがバリューチェーンの発展を基本にしているところから整理しよう。根来はコミュニケーションがバリューチェーンを発展させるとしているが、それを述べるにはやや遠いと考える。そこで本論では、サプライチェーンにおけるチェーン指向とコミュニティによるコミュニティ指向による知識交換が、知識交換の場であるプラットフォームに競争優位をもたらす貴重な知的資本を蓄積させる、という基本的着想に立つ。
 次に、主体間コミュニケーションの知識フローと知識ストックを整理する。これを知識は人間にしか蓄積されない原則に立つと、ECにおけるフローでは必ずコミュニケーションの過程でデジタル化されてします。そのため、フローの段階で情報へと転換されていると考えられる。同様に、ストックであるが、蓄積されるのはプラットフォーム、場なのであるから、知識ではなく知的資本となるのが一般的である。


 そこで、知識交換モデルの4つのパターンは、知識フローと知識ストックそれぞれに対し、チェーン指向のチェーン情報が蓄積されたチェーン資本、コミュニティ指向のコミュニティ情報の蓄積されたコミュニティ資本とする。
 まとめると以下のようになる。


知識交換モデルの4つのパターン

主体の関係 知識フロー 知識ストック
チェーン指向 1つのサプライチェーン中の上流・下流における主体同士 チェーン情報      サプライチェーン上の取引主体間の知識交換活動。他主体への「提案」と他主体への「要求」からなる。製品を通じた間接的コミュニケーションも存在する。 チェーン資本      知識トランザクションによって形成されたサプライチェーン上の他主体についての知識の整理された蓄積
コミュニティ指向 複数のサプライチェーンにまたがって、あるテーマを要求または議論する主体同士 コミュニティ情報      商取引から独立に主体同士がある場において行う知識交換活動。あるテーマに関心を持つ人々が集まること他主体への知識提供とそれへの反応からなる。潜在顧客も参加し、アクセス者が意図しない「場における結果としてのインタラクション」も含まれる コミュニティ資本      知識インタラクションによって、場に形成された知識の整理された蓄積


 次回からは、知識交換モデルにおける2つの指向である、チェーン指向とコミュニティ指向を既存の概念と比較しながら更に細かく見て行きたい。