チェーン指向とOne to Oneマーケティング

D. ペパーズ M. ロジャース著 ベルシステム24訳『ONE to ONEマーケティング−顧客リレーションシップ戦略−』ダイヤモンド社 1995.3


 チェーン指向はOne to Oneマーケティングを発展、整理したものといって良い。そこで両者の差異を明確にしておく。以下では、まずOne to Oneマーケティングのレビューし、後に差異を検証する。


 ペパーズ&ロジャースの「One to Oneマーケティング」 は次のように定義される。
「一人ひとりの顧客からそれぞれの好みや要望を聞き出し、それらの情報を会社にフィードバックすることで、顧客の好みにぴったり合った製品を顧客の望むタイミングで望む形にカスタマイズして提供する活動」

 One to Oneマーケティングは、利益をもたらすものは、「市場シェより顧客シェア」を基本とする。顧客シェアとは、「個別の顧客のなかで我が社の商品が選択される比率」である。これにより、顧客とのコミュニケーションを蓄積することによって生み出される経験である、顧客との継続的学習関係が生まれ、高い収益性を企業にもたらすというものである。


 その具体的な過程は以下の通りである。
1)双方向の対話やフィードバック・ループを通じて、顧客は企業に要望を伝える。
2)企業は、製品やサー日図をここの顧客の要望に合わせて提供し、その結果を記録する。
3)長期にわたる会話やフィードバックを繰り返すことで、顧客は自分の個人的なニーズをその企業に教えるために時間とエネルギーを費やしたことになる。
4)他の企業に最初から教え直さなければならなくなることを考えれば、築きあげた関係を維持することが顧客自身の利益にもなる。


 また、大規模なOne to Oneマーケティングに必要な情報技術として、以下の3つをあげている。
①顧客情報追跡:コンピュータのデータベースにおり、企業は顧客との間で交わされる多種多様な個別のやりとりを記録、追跡することが可能
②双方向の対話:コンピュータは、各種の双方向コミュニケーション手段を提供し、顧客からも企業に「話しかける」ことが可能
③マス・カスタマイゼーション:工場の組み立てラインや、物流システムに情報技術を適用することによる、製品やサービスのライン生産と個別仕様化の両立が可能



 チェーン指向とOne to Oneマーケティングとの差異として、以下の3点があげられる。
①One to Oneマーケティング最終消費者を意識してマス・カスタマイゼーションの概念を含むが、知識チェーンはサプライチェーン上の任意の主体間の知識が含まれ、マス・カスタマイゼーションの概念は含まない。
②One to Oneマーケティングは基本的にストックの考え方で、すでに顧客なった場合に対応するため、知識チェーンのようにフロート区別したストックで、潜在顧客への製品開発などに知識を用いる。
③One to Oneマーケティングが製品提供者と最終消費者との知識連結を図る、最終消費者を意識したものであり、それに対しチェーン指向は最終消費者を含まない場合もあり、知識チェーンをつくる主体にはサプライチェーン上のあらゆる主体が登場しうる、さらに複数のステージが登場しうる。