古書ポータルサイトの影響2

 前回は古書ポータルサイト全般について述べてみたが、今回からはより細かいポータルの性格に触れつつその影響を考えていきたい。

 まず、組合ポータルである。これは、日本の古本屋しかないので当然それを指しているのだが、これは開始から10年が経ち参加している人たちにはそれまでの営業を根本的変えるような影響があった。
 店頭販売以外では、デーパトやその他含めた外販や目録販売が主流だった時代に始まった日本の古本屋は、ITとの親和性の高い書籍の性格を見据えた先進性のあるものであった。ただ、もともと情報化に対してさほど先進的でない業界においてはその管理主体や組合との関わりで様々な過程があったことだろう。その中で、現在では第3の販路といわれるほどに組合ないでも認知され、つい先月にリニューアルするなどその活動に更に勢いが出ている。

 しかし、組合の枠組みは、インターネットの拡大の状況にはなかなか追いつけるものではなく、その量・質の充実や信用の問題では圧倒的優位を持っているにも関わらず、広報などの問題で他の大型総合ポータルに脅かされ続けている。先年の検索サイトへのなど改善が見られる点などを非常に評価できるところだろう。


桃塚薫 東京工業大学社会理工学研究科博士後期課程 2001年10月17日
「組織におけるオルト・エリートと集団間コミュニケーションについて」──協同組合のインターネット事業の事例を中心として──


2002/01/30 第8回社会情報システム学シンポジウム(電気通信大学
「文化産業におけるビジネス空間と非ビジネス空間について 」


花岡幹明  桃塚 薫(東京工業大学大学院博士後期課程)
Bulletin of Toyohashi Sozo College 2002, No. 6, 97-111
「組織における「オルト・エリート」と情報化について」――古書業界の事例を中心に――


桃塚 薫 東京工業大学社会理工学研究科博士後期課程
産業経営 Waseda business review Vol.34(20031215) pp. 21-35
「組織変革におけるオルト・エリートと制度の認知的側面−古書籍商業協同組合の情報化−」



 組合ポータルにおいて一番ネックとなったのは、組合としての公平性との葛藤である。組合においてポータルサイトはあくまでも古書販売を促すということ以上のことはできない。互助的性格を持つ組合においては各店を一覧にして紹介することはできても、特定の古書店の顔がよく見えるような仕組みにすることが非常に難しい。これが何より問題となった。
 これにより、組合ポータルで進んだのは、書籍の一覧機能と容易な在庫データの更新である。この、古書店の顔の見えない一覧機能により、それまでの信頼やつながりでの取引から価格が多くを支配するようになった。
 当然、管理者側としても、価格による絞込みがしにくい様にシステムを組んではいるものの、各店もそれぞれの差別化するものがなくなった以上、価格というものが大きな訴求効果を持つことを知り、簡便な更新機能を用いて頻繁な価格改定を行うようになった。これが単純ん供給過多以上に価格低下をもたらした1つの要因と考えられる。


 しかし、組合ポータルにくる顧客層は、さほど知名度のない中でも利用していた人も多く、それなりに古書に興味を持ち、本というもの自体に価値を考える層であった。しかし、大型総合ポータルの出現が顧客層の消費行動に大きな影響を及ぼし、さらにこの市場価格の下落に拍車をかける要因となる。

 次回には、大型総合ポータルの消費者に及ぼした影響について考えてみたい。

 古書ポータルサイトの影響1

 古書ポータルサイトの古書業界に与える影響は非常に大きかった。基本的に地域性をもっていた古書店が全国の市場にアクセスできるようになっただけのものではない。無愛想な親父といわれた、一国一城の主として各々特徴があり、独自のお客さんをもって、ある意味十分な差別化がされていた古書業界において、それを根本的に変化させるものになった。
 簡単にいえば、古書店主の顔が見えない、棚という城が存在しなくなり、各店の個性が消えてしまったのだ。その代わりに大きな幅を利かせたのは価格である。これまでは、主に業界の人にしか手にすることができなかった市場価格というものが、ポータルサイトの出現によって、全国あらゆる古書店のすべての価格が見られるようになったのである。それまで、各店の信用や長年のつながりで販売していたものが、価格によって評価されるようになったのである。
 これは、確かに競争を活性化させ消費者にとっても非常に便利になった。全国の在庫がそれまで目録という入手しにくいもの、または古書店の店主に問い合わすという手段でしか確認できなかったものを家に居ながら一覧できるのだから、その利便性はすさまじい。
 これによって利用者が増え、競争による価格低下を上回れば古書業界においても非常にメリットになると思われたが、現実はそうはならなかった。
 消費者の読書離れ、図書館・教育機関などの公的な購入の減少、さらにこれまでの顧客の高齢化などにより一般的に古書業界全体において利用者の回復は見られない。その一方で、地方に分散していた在庫が一斉に全国に発信されたことによる供給過多で古書の市場価格の減少は歯止めが利かなくなった。これは、ポータルサイトの市場価格が一覧できる利便性が大きく寄与している。当然、消費者が市場価格を手軽に確認できるようになっただけでなく、古書店側も自分の在庫と市場価格との差を常に確認できるようになったことで、常に価格競争に陥ってしまったのだ。


景気ウォッチャー調査(平成18年8月調査) 平成18年9月8日 内閣府政策統括官室
景気判断理由集(現状)(PDF形式)
p93「古書店でもネット販売が台頭しており、価格競争のため以前の3分の1以下の価格となっている。」 



 市場価格の下落が古書ポータルの問題で業界だけに留まっているのであれば、影響もそこまで大きいものではなく、また市場価格の下落も歯止めがかかったのである。しかし、大型総合ポータルサイトなどネットでモノの売買の流れが変化するにつれより状況は大きく動いていく。

古書ポータルサイト一覧
 ポータルサイトとしては大きいものから小さいものまであるが、代表的なものだけでも以下のものがある。

組合ポータル 日本の古本屋
地域ポータル BOOK TOWN じんぼう
早稲田古本ネット
いいふるほん
古書専用ポータル スーパー源氏
ザ古書・古書検索
iwBOOKs
大型古本サイト ebookoff
古本市場
大型総合ポータル Amazon
楽天
ビッターズ
EasySeek '05/4閉店
無料古書ポータル 古本いちば
古書の杜
Oldbook Mark

koshoten.netとは

 少し、これまでの内容とからは離れるような感じにはなるが、古書店好きを自称してしまったので、プラットフォームや知識交換モデルからは少し離れて、古書店について触れていきたい。
 その中で、まず注目するのは古書店のECにおける主流となるKoshoten.netについてです。


 koshoten.netは古書店ecサイト構築を支援する試みとして、オープンソースecサイト構築システムであるosCommerce古書店の特性にあわせてカスタマイズしたものである。

http://www.koshoten.net/

 Koshoten.netはオープンソースosCommerceを利用した沖縄の古書さりぃさんに刺激された、開発者の青木さんによって運営されている。
 もともと古書店におけるECはポータルサイトがメインで経緯があり、各店の独自サイトを本格的なものとして運営できる古書店さんは非常に少なかった。実際に独自のサイトを立ち上げるのは基本的なITに関する知識が多いとはいえない古書業界の各店にとっては大きな負担になることは明らかであり、日本の古本屋を中心とするポータルサイトに頼っていたのは確かである。

 そのなかで、Koshoten.netは低コストでこれまでに比較して技術的障壁をさげ、継続的な管理を容易にした点で画期的であった。これまでも、ECサイト支援ソフトは存在していたのだが、高コストであったり、技術的障壁が大きかった、さらに古書店の実情から乖離していて継続性が低いものが多かった。


 さらに、国立情報学研究所GETAという汎用連想計算エンジンをもちいて連想検索を可能にしたKoshoten.net2が発表され、これまでにない圧倒的な古書店用のECサイト構築支援ソフトになっている。

 チェーン指向とは

手島歩三 根来龍之 杉野周編 『ERPとビジネス改革 : 統合業務パッケージ活用の誤解と指針』日科技連出版社 1998.4

 ここでは、チェーン指向とは具体的にどのようなものなのかをより詳細に検討してみよう。



 チェーン指向はサプライチェーンをどのようにつないでいくのか、企業連携への指向、SCM(サプライチェーン・マネジメント)と言い換えることもできます。SCMとは「チェーン上のプレイヤーが、企業や組織の壁を越えて情報を共有することによりそれぞれのところで発生していた無駄を排除し、ビジネスプロセスを効率化したうえでコストを最小限に抑えながらもビジネス・スピードを飛躍的に向上させ、顧客満足度を追求していく経営手法」 のことを言います。つまり、消費者に対して「必要なときに、必要なときに、必要な量を安価に」届けるためには、資材の調達から消費者の手元に商品が届くまでのサプライチェーン全体があたかも1つの組織であるかのような全体最適化を実現する、ビジネスプロセスの効率化のことです。



 Bressand[1990] は、知識社会においては、ますます、企業連携が重要な意味を持ってくると主張する。その背景には、知識が経済活動の中で重要度が高まってきていることがある。それまでの生産物中心の経済から知識中心の経済へ転換するとき、生産物と知識では、富の形成原理が全く異なっている。知識が富を形成する原理を注意深く吟味し、その理解を基本に、新たな経済の枠組みを考察する必要がある。生産物と知識の違いは、生産物は、人(主体)と容易に分離できるという意味で、モノとして扱われるが、知識は、簡単に主体と分離することができないところにある。つまり、知ることは頭の中の状態が変化することであり、知識を売ったとしても、頭の中から消え去ることはない。すなわち、「知識は共有しかできない」とブレッサンはいう。そうなるとモノの売買のように所有権が移転する経済活動ではなく、人と人とが知識を通じてつながりを持つこと、すなわち「関係性」が、富の形成に重要な役割を果たす。これが、知識経済がモノ経済と大きく違うところとなる。経済活動において、関係性が重視されるということは、企業が経済活動の中心的役割を果たしている社会では、とりもなおさず企業連携、もしくは、企業ネットワークが重要だということになる。


 
 根来は知識社会におけるSCMのあり方として、トータル・サプライプロセスにおける各主体の取引先への対応を提案している。
 
 まず、トータルサプライ観とは、各サプライ主体が最終消費者のニーズ」を認識し、それをふまえて対話すべきという考え方であり、それまでの直接ユーザーへの貢献を最も重要視する二者間取引観の考え方とは違う。
 これは、川上に行くほど最終市場の需要変動の影響が大きくなる現象である、フォレスター効果を前提に考えられたものであり、サプライチェーン上の企業があたかも1つの企業のように、連携し全体最適を実現し最終消費者に製品やサービスを届けるものである。
 トータルサプライ観によるアプローチとしては、企業は、参加するサプライプロセス全体の競争力向上を図ることによって自社の発展させること。また、トータル・サプライプロセス中において、取引関係にある主体間の関係を示す次の2つのモデルを想定している。
1)企業間の付加価値連鎖をめぐる満足・貢献・要求の関係にあること。
2)各企業は、原料採取から製品消費に至る「製品に付加価値をつける全課程」(トータル・サプライプロセス)の一部に参加する



 また、トータル・サプライプロセス中において、取引関係にある主体間の関係を示す2つのモデルが存在する。
①製品を作る主体者は、供給先の活動目的を考慮してサプライ主体が自分の活動を決める事。
これには次の2つの前提が存在する。
 ○企業が製品をつくる活動(主体活動)は、「顧客の製品を作る活動」に貢献する「顧客貢献目的」と直接的に顧客貢献を目指さないそのほかの目的である「主体満足目的」とを調停しながら主体活動を行う。
 ○顧客貢献目的は、サプライ主体が自分なりに顧客が主体活動を行う際の顧客の顧客貢献目的と主体目的を解釈することによって設定される。
②製品を購入する主体者は、供給者に自分の主体活動に対して考慮を求める
これにも2つの前提がある。
 ○主体者は、自らの主体満足目的を満たすための要求と、顧客満足目的を満たすための要求に応えることを、同時に供給者に伝えようとする
 ○供給者の製品を作る活動(供給活動)は、主体者の要求と自らの主体満足目的の調停として成り立つ



 まとめると、トータルサプライ観において、各サプライ主体が最終消費者の利用目的(主体満足目的)を直接解釈し、それぞれの顧客貢献目的の設定に反映させる。そのため、顧客の主体満足目的は最終消費者の主体満足目的という絶対基準を土台にした、2次的に尊重すべき対象として重要と考えるのである。最終消費者のニーズに対する認識の共有化を前提とした説得や適応、認識の異なる顧客からの関係離脱や、対話による市場認識の調整の必要となり、それがプラットフォーム・ビジネスの役割なのである。

 コミュニティ指向と顧客間インタラクションの差異

國領二郎『オープン・アーキテクチャ戦略―ネットワーク時代の協働モデル―』ダイヤモンド社 1999.11

 コミュニティ指向は、国領の「顧客間インタラクション」概念を拡張したものである。そこでOne to Oneマーケティングと同様に、差異を明確にするため、顧客間インタラクションのレビューを先に行い、最後に差異をあげる。


 國領の「顧客間インタラクション」はコンピュータ・ネットワーク上のコミュニティ上で、従来コミュニケーションの物理的制約から交流するとの無かった消費者たちが、商品やサービスの情報を交換・共有し合い、それが商品の売れ行きや顧客満足度に大きな影響を与えるようになった現象である。
 顧客サイドに情報が多い時代には、顧客コミュニティの知恵と相互作用しながら価値を創造し、それを内部化して利益とするビジネスモデルが求められる、というこれまでの売り手主導の生産方式を転換するものである。


 そもそも、企業と顧客との関係パターンとしては、以下の3つである。
1)売手からの一方的なコミュニケーションマスコミュニケーションを利用した宣伝や広報
2)双方向コミュニケーション:カスタマーセンターなどにおいて行われている顧客とのコミュニケーション。顧客からの提案・クレームなどを積極的に製品開発に結びつける
3)顧客間インタラクション
:企業と顧客との間だけでなく、顧客同士の関係が形成されるコミュニケーション。ネットワーク上の顧客同士が相互作用を形成する「場」におけるコミュニケーション


 顧客間インタラクションの諸形態としては、次の5つがあげられる。
①商品型:顧客間インタラクションそのものが商品である場合
②ユーザーサポート型:顧客相互が使用方法の疑問やトラブル対応に関して助け合う現象
③評価口コミ型:商品評価に関わる顧客間インタラクション
④開発参加型:ユーザーサポートの壁を破って、ユーザーの手によって商品が補完するような補助が他商品が開発されるもの
⑤クリティカル・マス形成型:ネットワークの外部性によって、受けられる便益が限界費用を超え、商品に対する需要が加速度的に高まる現象
 しかし、顧客間インタラクションも、企業に情報はコントロールできないため、よい情報であれば宣伝効果があるが、情報によっては企業に大きなダメージがある場合がある。これを、負の口コミ効果と呼ぶ。


 もともと、國領のプラットフォーム・ビジネスの役割は、顧客間インタラクションを起こすことである。多くの人々の創意工夫が相乗効果を生み出すような環境をビジネスとして提供し、その付加価値に対する報酬を自社に取り込めるような仕組みを作ることにより、プラットフォーム・ビジネスの持つ「場の創造性」引き出される。これにより取引参加者が相互に関わり、情報交換を行い、顧客間インタラクションにより、その場自体に情報が蓄積されることで、プラットフォーム・ビジネスの経営自体の中核的機能となる。更に、人の知識型の人の知識と結合して更に新しい知識を生む、知識の収穫逓増の原理が働くのだ。


 チェーン指向と國領の「顧客間インタラクション」との差異としては、以下の3点があげられる。
①顧客間インタラクションは、最終消費者間コミュニケーションに着目した概念だが、知識インタラクションは企業間コミュニケーションを含む、アクセス者間のインターネット上のある場における相互作用すべてを対象にしている。
②顧客間インタラクションは基本的にフローの考え方であり、見込み客に限定されたいとしたインタラクションである。知識インタラクションはストックと区別されたフローであり、潜在顧客も参加でき意図しない形での形成されたものであり、知識コミュニティに蓄積されて、またフィードバックされる
③顧客間インタラクションは、ある製品の顧客間に限定されたインタラクションでありアクセス者外としたインタラクションをいうのに対し、コミュニティ指向は、アクセス者が意図しない、場における結果としてのインタラクション、発信者が意図しないで行った相互作用を場の運営者や生産者が抽出することも含まれる

 チェーン指向とOne to Oneマーケティング

D. ペパーズ M. ロジャース著 ベルシステム24訳『ONE to ONEマーケティング−顧客リレーションシップ戦略−』ダイヤモンド社 1995.3


 チェーン指向はOne to Oneマーケティングを発展、整理したものといって良い。そこで両者の差異を明確にしておく。以下では、まずOne to Oneマーケティングのレビューし、後に差異を検証する。


 ペパーズ&ロジャースの「One to Oneマーケティング」 は次のように定義される。
「一人ひとりの顧客からそれぞれの好みや要望を聞き出し、それらの情報を会社にフィードバックすることで、顧客の好みにぴったり合った製品を顧客の望むタイミングで望む形にカスタマイズして提供する活動」

 One to Oneマーケティングは、利益をもたらすものは、「市場シェより顧客シェア」を基本とする。顧客シェアとは、「個別の顧客のなかで我が社の商品が選択される比率」である。これにより、顧客とのコミュニケーションを蓄積することによって生み出される経験である、顧客との継続的学習関係が生まれ、高い収益性を企業にもたらすというものである。


 その具体的な過程は以下の通りである。
1)双方向の対話やフィードバック・ループを通じて、顧客は企業に要望を伝える。
2)企業は、製品やサー日図をここの顧客の要望に合わせて提供し、その結果を記録する。
3)長期にわたる会話やフィードバックを繰り返すことで、顧客は自分の個人的なニーズをその企業に教えるために時間とエネルギーを費やしたことになる。
4)他の企業に最初から教え直さなければならなくなることを考えれば、築きあげた関係を維持することが顧客自身の利益にもなる。


 また、大規模なOne to Oneマーケティングに必要な情報技術として、以下の3つをあげている。
①顧客情報追跡:コンピュータのデータベースにおり、企業は顧客との間で交わされる多種多様な個別のやりとりを記録、追跡することが可能
②双方向の対話:コンピュータは、各種の双方向コミュニケーション手段を提供し、顧客からも企業に「話しかける」ことが可能
③マス・カスタマイゼーション:工場の組み立てラインや、物流システムに情報技術を適用することによる、製品やサービスのライン生産と個別仕様化の両立が可能



 チェーン指向とOne to Oneマーケティングとの差異として、以下の3点があげられる。
①One to Oneマーケティング最終消費者を意識してマス・カスタマイゼーションの概念を含むが、知識チェーンはサプライチェーン上の任意の主体間の知識が含まれ、マス・カスタマイゼーションの概念は含まない。
②One to Oneマーケティングは基本的にストックの考え方で、すでに顧客なった場合に対応するため、知識チェーンのようにフロート区別したストックで、潜在顧客への製品開発などに知識を用いる。
③One to Oneマーケティングが製品提供者と最終消費者との知識連結を図る、最終消費者を意識したものであり、それに対しチェーン指向は最終消費者を含まない場合もあり、知識チェーンをつくる主体にはサプライチェーン上のあらゆる主体が登場しうる、さらに複数のステージが登場しうる。

 知識交換モデル

 以前、根来の知識交換モデルを紹介したが、今回は、ECに適応させより一般的な知識の定義に置き換えることで、整理し直し、知識交換モデルとして提案したい。

 
 まず、根来の知識交換モデルがバリューチェーンの発展を基本にしているところから整理しよう。根来はコミュニケーションがバリューチェーンを発展させるとしているが、それを述べるにはやや遠いと考える。そこで本論では、サプライチェーンにおけるチェーン指向とコミュニティによるコミュニティ指向による知識交換が、知識交換の場であるプラットフォームに競争優位をもたらす貴重な知的資本を蓄積させる、という基本的着想に立つ。
 次に、主体間コミュニケーションの知識フローと知識ストックを整理する。これを知識は人間にしか蓄積されない原則に立つと、ECにおけるフローでは必ずコミュニケーションの過程でデジタル化されてします。そのため、フローの段階で情報へと転換されていると考えられる。同様に、ストックであるが、蓄積されるのはプラットフォーム、場なのであるから、知識ではなく知的資本となるのが一般的である。


 そこで、知識交換モデルの4つのパターンは、知識フローと知識ストックそれぞれに対し、チェーン指向のチェーン情報が蓄積されたチェーン資本、コミュニティ指向のコミュニティ情報の蓄積されたコミュニティ資本とする。
 まとめると以下のようになる。


知識交換モデルの4つのパターン

主体の関係 知識フロー 知識ストック
チェーン指向 1つのサプライチェーン中の上流・下流における主体同士 チェーン情報      サプライチェーン上の取引主体間の知識交換活動。他主体への「提案」と他主体への「要求」からなる。製品を通じた間接的コミュニケーションも存在する。 チェーン資本      知識トランザクションによって形成されたサプライチェーン上の他主体についての知識の整理された蓄積
コミュニティ指向 複数のサプライチェーンにまたがって、あるテーマを要求または議論する主体同士 コミュニティ情報      商取引から独立に主体同士がある場において行う知識交換活動。あるテーマに関心を持つ人々が集まること他主体への知識提供とそれへの反応からなる。潜在顧客も参加し、アクセス者が意図しない「場における結果としてのインタラクション」も含まれる コミュニティ資本      知識インタラクションによって、場に形成された知識の整理された蓄積


 次回からは、知識交換モデルにおける2つの指向である、チェーン指向とコミュニティ指向を既存の概念と比較しながら更に細かく見て行きたい。